22周年記念ライブイベント “Forgotten Treasures”より ~Home, Sweet Home

王は密室の人いきれに疲れたように、そっと席を立ってバルコニーへ出た。

夜の冷気が心地良かった。喫緊の課題は山積みだが、誰が味方で、誰が敵なのか、忸怩たる気分が晴れることはなかった。藪の中に手を突っ込み、“多様性”という名の蛇にその手を噛まれたかのようだ。王が溜め込んでいたものを吐き出そうと大きく息を吸い込んだその時、一陣の強い風が吹き、王は咄嗟に肘で顔を覆うように身構えた。袖口に半分隠された視界の先で、白く輝く影が去り際に何かを囁いたような気がした。

「Chaos(カオス)……。」

明かりを落とした室内で額を寄せ合うのは、甲冑に身を固めた初老の騎士、青いメイジ帽を被った血色の良い魔法使い、そして分厚い本を小脇に抱えた天文学者だった。

“Celestial Britannia”

明るい碧色の表紙には、星を散りばめたかのように白く輝く文字が踊っていた。語気を強めて言いつのるのは、本の著者であるサー・ジョンであった。

「一つ、言えるのは惑星直列が起こるとき、あらゆる世界の境界線が曖昧になると言うことだ。ソーサリアのムーンゲートのネットワークにはすでに異変が起きている。このことが何を意味するのかは火を見るよりも明らかだ。」

ミルクティー色をした長いあごひげを撫でながら、傍らのメイジも深く頷き、同調した。

「イルシェナーの名誉ゲートは過去にエクソダス復活のきっかけとなったネクサスの影響を最も強く受けている。皮肉なことに、今回のことでその脆弱さがあらためて証明された。ムーンゲートが潮の干満の影響を受けることは良く知られているが、潮は引くことなく力は増大している。詠唱による修復で凌げるのはおそらく今回が最後だろう。今後は名誉以外にも被害は拡大して行く。」

「ドースト先生。」

ドーストの学者らしい抜け目のない視線が、しびれを切らしたように声を発した甲冑の騎士に注がれた。

「我々はフォースキスを追う。ムーンゲートの異常の件は承知しているが、彼がいるところに“ジェネレーター”もきっとある。どこへ行けば?」

答えたのはドーストではなく、バルコニーから戻りしなにデュプレの背後に立った王であった。

「ベスパーだ。」

ドーストの丸い目が一層丸くなり、サー・ジョンは小脇に抱えていた本をテーブルにそっと置いた。

次の瞬間、碧い本の白い文字がわずかに動き、完全に直列するのをデュプレは見た。

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日時: 8月11日(日)午後10時より開始
集合場所: ブリテイン市民広場(六分儀座標: 7o 54’S, 11o 10’E)
※ 当日はニュジェルムEMホールよりゲートを設置します。

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