【イベント】鉱夫アメデオの話

首都ブリテインにある芸術家ギルドは建物こそ小さいが、画家や彫刻家を志す人々の憧れの場所である。若い芸術家の卵は故郷からそこを目指す。ギルドに所属し、センス磨き、技を競い合いながら一人前の芸術家となるべく努力する。しかし努力で到達できるレベルには限界がある。芸術の女神に愛されず、夢破れて故郷に帰る者も少なくはない。

「ブリテインに来るといつもここ足が向いてしまう。未練がましいものだ」
久しぶりに訪れた芸術家ギルドの前でアメデオはひとりごちた。

アメデオは若いころ画家を志しここに通ったことがあった……生来の手先の器用さから地元ミノックで神童と呼ばれ意気揚々と首都に出てきたのは昔のこと。ブリテインには彼より才能のあるライバル達がたくさん集まっていた。彼は画家としての成功を諦め、故郷へ帰り家業を継いで鉱夫となる道を選んだ。画家にこそなれはしなかったものの、彼は鉱山で採れた宝石を加工し、宝飾品や絵の具の顔料を作っては、たまにブリテインへ行商に来るのだった。今日もその行商の帰り道だったのだ。

「エミリオは元気だろうか?」
芸術家ギルドに勤める画家エミリオはアメデオのかつてのライバルであった。エミリオが駆け出しの画家だったころに描いた肖像画が素晴らしいと評判になり、彼はギルドに認められ、有名な画家となっていた。その肖像画はとある婦人のために描かれたもので、彼女の美しい金髪を再現するために特殊な絵の具が使われているものだった。その絵の具の顔料のプリズムアンバーはかつてマラスで採掘できたが、現在では光晶洞のどこかでしか手に入れる事が出来ない。エミリオは冒険者に頼みそれを手に入れていたのだが、普通こういった珍しい原料を使った顔料はとてつもなく高価で、有名な画家の間で珍重されており、そうやすやすと手に入るものではない。

建物の入り口の前でアメデオが中に入るかどうか迷っていると、突然扉が開き中からエミリオが出てきた。
「アメデオじゃないか!」
「……わぁっ!」
不意に声を掛けられ、アメデオはビックリして叫んだ。
「スマン、驚かしたかい?窓から見えたんでね。突っ立ってないで中へお入りよ」
「エッエミリオさん!ちょっと近くに来たもので。お元気でしたか?お噂はかねがね……」
「なんだい改まって……久しぶりだね。今日はどうしたんだい?」
「いやちょっと寄ってみただけなんで。特に用事があるわけじゃ」
「まあまあそう言わずに」
エミリオは絵の具の付いた力強い手てアメデオの腕を引っ張ると、半ば強引に彼を中へと招きいれた。
「ちょっと待っててくれ。弟子に製作の指示を出してくるから」
勧められた椅子に座り、ふと室内を見渡すと彼の回りを数人の弟子が取り囲みあれやこれやと質問しているのが目に入った。それに対しテキパキと指示を与える彼の姿はアメデオがかつてあこがれた理想の自分そのものだった。世の中に画家は星の数ほどいる。しかしその中で傑作を生み出せるのはほんの少数だ。自分とエミリオの今を見比べると、アメデオは居たたまれなくなって帰り支度を始めた。
「待ってくれアメデオ、もう少しで一段落するから」
「忙しいならまた出なおしますよ」
「そうかい?悪いね。そうだ、来月ここでとある有名画家の絵の展覧会をする予定でね。良ければその時にでも」
「都合がつけばお伺いします。でも今日はこれで……用事を思い出したので!」
アメデオは別れの挨拶もそこそこにドアを飛び出して行ってしまった。
「どうしたんだアイツ?」

アメデオは惨めな気持ちで帰路についていた。
「ちくしょう、ちくしょう!なにがプリズムアンバーだ!」
他人の成功を羨んだとて、どうしようもないのはわかってるのだが……。
家に戻り、背中から鞄を降ろすと怒りに任せてそれを部屋の壁に叩きつけた。鞄は壁で跳ねて部屋の奥にある埃を被った箱に命中した。それはアメデオが芸術家ギルドに加入を認められた際、今は亡き祖父が記念にとプレゼントしてくれた箱だった。ミノックに戻って以来、その存在を忘れていたのだが、中には解読できない古ぼけた地図が入っていたはず。ただのお守りだと思っていたがその箱だが……鞄が当たった拍子に箱の底が壊れて小さな本が転がり出て来るのが見えた。
「うん?何だろう?」
それは初めて見る祖父の日記帳だった。日記の表紙の裏に記された文字はこうだった。

「親愛なるアメデオへ 若き画家の未来のために記す。 祖父より」

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日時: 6月22日(日)21時開始
集合場所:ブリテイン芸術ギルド前(六分儀座標:4o 2’S, 8o 30’E Trammel)
※二ジェルムEMホールより集合場所までゲートを設置予定です。
ニジェルムEMホールへはブリ第1銀行南側のゲートをご利用ください。

◆ イベントチャンネル JapanEMevent(#無し) にお入りください。
◆ 当日は戦闘準備のうえ、お越しください。
◆ 貴重品は持ち込まないよう、お願いいたします。
◆ 以下に該当の場合、あるいはEMが問題ありと判断した場合はコールのうえ、
  イベント中止の措置を取らせていただく場合があります。
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  お願いいたします。
◆ 皆さんのイベントです。マナーを守って楽しく参加しましょう!
  プレーヤーの皆さまのご協力をお願いいたします。