ニコル・ヴァレンタインの結婚式

今から約1年前の事だった。
2012年6月のエクソダス戦役の折に、イルシェナーのヴァーローレグへ探索に向かって消息を絶っていたロイヤルガード隊長のニコラスがサイクロプスキャンプ近くのヒーラー小屋で保護されているという知らせがブリタニアに届いた。
それを聞いたニコラスの部下であるニコル・ヴァレンタインは即座にヒーラー、アルケミスト、その他数名の護衛を手配し彼のもとへと飛んでいった。
行方不明の間、ニコラスの身に何があったのかは定かではないが、彼の看護に当たっていたヒーラーの話によると、彼はぼろぼろの鎧をまとい、意識不明のままヒーラー小屋の入り口に倒れていたとの事だった。

「しかしあなたは運が良い。ここに来た時は正直もう駄目かと思いましたが、よくここまで回復なさいました」
「ありがとうあなたのおかげだ。すっかり世話になってしまったな。だが私は一刻も早くブリタニアに戻らねばならない」
「そうですね。あなたがここへいらして4ヶ月、そろそろ体を動かしても大丈夫でしょう。ヴァレンタイン家にはお知らせしてありますから、もうしばらくすればお迎えの一行が来るはずです」
ヒーラーに促されニコラスがベッドから体を起こしたその時、入り口から駆け足で入ってきたニコルが彼に飛びついた。
「……ニコラスっ!」
「痛っ!!」
「無事だったのね!!良かった!ああ!神様感謝します!!」
ニコルは赤い髪を振り乱し、大きな青い目からはぼろぼろと涙の粒を溢れさせていた。彼女の両腕はニコラスの体をぎゅっと抱きしめながら震えていた。
ニコラスは昔、初めて訪れた上官の家の中庭でぬいぐるみを抱きしめながら涙をこらえていた赤い髪の少女を思い出した。
(あの時は確か、こっそりと野良犬を屋敷に入れて遊んでいたことを母親に叱られたのだったな……)
あれから15年にもなるが、彼女の泣き顔をみるのは本当に久しぶりだなとニコラスは思っていた。
「ニコル様、そんなにきつく抱き付いていてはニコラス殿の傷に障ります」
護衛の言葉を聞いてニコルがやっとニコラスから離れると、彼女とともに来た一行はニコラスを素早く荷馬に乗せ帰還準備を整えた。
ニコルは涙を拭くと精一杯気丈に振る舞いながらヒーラーに挨拶をすませ、ニューマジンシアのヴァレンタイン家にニコラスを連れ帰るよう一行に指示を出した。

それからの数ヶ月間、ニコルのニコラスへの献身的な介護は彼女の両親を驚かせるほどだった。
実家のヴァレンタイン家には召使いが何人もいるというのに、ニコラスの食事や着替え、リハビリに至るまでの一切をニコルが行い、ニコラスのそばから片時も離れずにいた。
ニコルとニコラスの努力の甲斐あってニコラスが順調に回復した頃、二人を見守っていたヴァレンタイン夫人はある妙案を思いついたのだった。

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ニューマジンシアの北部に位置する東屋は、ヴァレンタイン家の令嬢の結婚式を控えて美しく飾りつけられていた。
「なんだかんだで延び延びになっていた結婚式だけれど、いよいよね」
ナチュラリストのローズは令嬢のために用意されたウエディングブーケを左右に見せながら言った。
「ガーデナーの皆さんから頂いた青い花で作ったのよ、綺麗でしょう?」
「わあ素敵!ニコルもきっと気に入るわ!」「……。」
はしゃぐさっちゃんの隣で、難しい顔をしているゆうちゃんを気にしてローズは続けた。
「ゆうちゃん、どうしたの?このブーケのデザイン気に入らないかしら?」
「ううん違うのよローズ、そのブーケはとっても素敵よ……でも…ニコルは本当にこのまま結婚していいのかしら?彼女は迷っているみたいなの。結婚してロイヤルガードの仕事を辞めるかどうか」
「確かにこの結婚はヴァレンタイン夫人が仕切っているみたいなところはあるけれど……」
「そうよ、あの母親!ロイヤルガードなんかさっさとやめて、家を継げとか言ってたわね!」「うん……」
左右があまりにも大きな声で文句を言ったので、道りすがりの女性が足を止め彼女たちに注目してしまっていたのに気がついたローズは慌てた。
「と、とにかくニコルさんには幸せになってもらいたいわね。さあ、残りの飾りつけも早く済ませてしまいましょう!!」
ぶつぶつと文句をいいつつも左右とローズが仕事に戻ると、立ち止まっていた女性は再び歩き出した。

クリスマスカラーの草花に彩られたニューマジンシアの花壇の横でタウンクライヤーが叫んでいる。
「号外~!」
「ニューマジンシアの名門Valentine家ご令嬢の結婚式が19日(木)22時より執り行われます!」

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開始予定日時:12月19日(木)22時

集合場所:ニューマジンシア北東屋(六分儀座標:38o 50’S, 168 32’E Trammel)
※二ジェルムEMホールより集合場所までゲートを設置予定です。
ニジェルムEMホールへはブリ第1銀行南側のゲートをご利用ください。

注意事項:
◆ イベントチャットチャンネルにお入りください。
  桜シャードは JapanEMevent(#なし)
◆ 当日は戦闘準備のうえ、お越しください。
◆ なるべく貴重品は持ち込まないよう、お願いいたします。
◆ 以下に該当の場合、あるいはEMが問題ありと判断した場合はコールのうえ、
 イベント中止の措置を取らせていただく場合があります。
– イベント進行の妨害、かく乱行為。
– EM、あるいはほかのプレーヤーに対する侮辱的発言、またはそれに準ずる行為。
◆ 皆さんのイベントです。マナーを守って楽しく参加しましょう!